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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第6章 言われなくてもそうするよ◉心操人使



「し、心操く、ん・・!」

「こういう事だって、隙あらばしたい」

薬師が部屋に来る度に邪念ばっかで勉強どころじゃないよ、そう言って目元を赤くした顔が私を睨むともう一度唇が重ねられる

「ん・・、っ」

「薬師のこと、本当はめぐって呼びたいし」


椅子から立ち上がった彼が私の横に腰を下ろして
膝が触れるとまた速くなった胸の音、
震える私の手から取り上げられた教科書が床に落ちた


「・・距離とってないと暴走しそうだから
 横には座らないようにしてたけど、」

「え、あ、あの」

「もう、知らない」

格好つけて我慢してた分今から暴走するよ、
そんな予告を囁いた彼が私の肩に手を添えて

ゆっくりと加えられた力に身体を預けると
背中に感じた心地良い柔らかさに頭が逆上せた


「編入したら、今まで以上に忙しくなって会う
 時間も減るけど・・冷めたとかじゃないから」



真っ直ぐに私の目を見てそう呟いた彼が、また甘い口付けを落として

何度も啄むように繰り返されたそれは徐々に深くなり、熱い舌が優しく私を捕まえる


「だから、連絡が減っても俺の事好きでいて」

「んっ、はぁ・・っ、」

「あとあんまり他の奴と仲良くしないで」

唇が触れ合ったまま囁かれた言葉に頭が痺れていく
甘い声も乱れた息も、そのままを流し込まれて


「めぐ、返事聞かせて」

潤んだ視界で見上げた先には、初めて見る余裕の無い瞳
私と同じように息を上げたその赤い顔が恥ずかしそうに伏せられた



「心操くんの、貴重なお願い事だもん・・、
 守るって約束する・・」

回らない頭で絞り出した私の言葉に、彼は大きな溜息をついた


「貴重な、とか言ってる間は全然わかってない」


苛ついたように吐き捨てた彼がブランケットを掴んで床に落とすとひんやりとした空気が脚に触れる
熱を帯びた身体にはそれすらも心地が良くて

やっぱり優しいよ、そんな事を考えていた私の耳に不機嫌な声が注がれた

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