第1章 混じり合うそれに幾つかの◉白雲朧
「なぁショータ」
「ん」
めぐがひざしの彼女になって数日
廊下や帰り道で見かける仲睦まじい姿に
もやもやとした感情が募っていく
「なんか俺、元気なくね」
「・・充分元気そうに見えるけど」
いつもの半分くらいなんだよなー、そう息を吐いて柵に両腕を乗せる
見上げた空はここ数日ずっと晴れ渡っているのに
なんかこう、物足りなくて
「なんとなく、理由はわかってんだ」
「へえ」
本に目線を落としたままのショータが興味無さ気に返事をした
「わり、今日の昼はめぐと食うから!」
へらへら笑ったひざしの顔が浮かぶ
じゃあ俺も混ぜろ!、そう言った俺を「空気読め」とショータがずるずると屋上へ引き摺った
ひざしはまるでめぐを俺から遠ざけるように四人になることを避けている気がする
ってか突然なんであの二人が付き合い始めるんだ、ひざしは他に気になる子が居たはずなのに
元気が出ないどころか、考えれば考えるほど苛々してきて
「あー、めぐに触りてぇ」
無意識にそんな言葉が口を衝いた瞬間、軽蔑を隠さない視線が背中に刺さり思わず下を向いた
「はは、まずいよな、ひざしに殺される」
わかってる
自分が何を言っているのか
「毎日ベタベタ触ってたもんな」
そんな目で俺を見るなよ・・
読んでいた本を閉じ
まじまじと見つめられると居心地が悪い
「めぐ、もう好きって言ってくれないよな」
「・・・・」
なぁ、なんか言ってくれよ、
縋る思いでおずおずと顔を上げると
甘えてんじゃねぇよ、と呟いてショータはまた本を開いた
「だよなー・・」
大きく息を吐いて右手で空を掴む
照れ臭そうに俺を見上げるあの顔はもう見られない
くしゃりと撫でた柔らかい髪の感触が恋しくて
そう、恋しくて
ああ、恋しいのか
「なぁ、俺、
めぐのことそういう目で見てたのかなぁ」
「知らん」
———白雲くんのことが、ずっと前から、
そう言って真っ直ぐに言葉を紡ぐあの紅い顔も
「ひざしは、触ってんだよなぁ」
「引くくらいにな」