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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第4章 口溶けに恋して◉相澤END



「・・消去法、ね」

私の言葉に耳を貸す様子もなく
不機嫌に眉を寄せたその顔がまた近付いて、
咄嗟に突き出した私の両腕を彼が片手で引き寄せる

ぽす、と音を立ててその胸に飛び込んだ私の耳元にその唇が寄った


「ちゃんと意識しろよ、お前が今誰とシてんのか」

「何、言って・・」

「そういう目で俺を見られないなら、
 見られるようになるまでやめないから」

そう言って気怠気に立ち上がった彼は私の腕を掴むと、図書室の奥へずんずんと歩みを進める


「相澤、くん・・!?」

本棚が立ち並ぶ狭い通路に入ると
その両腕の中に私を閉じ込めた

薄暗い照明と、背中に触れるひんやりとした本の感触


「明るい所じゃできないこと、するから」

「あの、相澤くん、どうか落ち着いて・・!」

「お前よりずっと落ち着いてるよ」

密着したその身体を離そうと身を捩っても
予想通りびくともしなくて
吐息のかかる距離で見つめるその瞳の中に熱が揺れる

「本気で嫌なら、
 本で殴るとか大声出すとかできるだろ」

意地悪く上がった口角がこれ以上無いほどに胸の音を早めて


「嫌じゃない、って顔してるな」

「そんなことな・・っ」

「傷心なのは好都合、存分に利用させてもらう」

ちゅ、と静かに唇が触れて
相澤くんの指の背がするりと頬を撫でる

軽く触れて離れただけのキスに、抱いてはいけない感情が私の中に積もっていくのを彼は見逃さなかった

「足りないか」

「手、離してよ・・っ」



「お前が今欲しいと思ってるのは」

どこぞの先輩じゃないだろ、鼻先の触れる距離で勝ち誇ったように囁かれ顔に熱が集まる

「余所見ばっかしやがって」

ブレザーの下に忍び込んだ手がシャツの裾を手繰り寄せて
確実に素肌に迫るその指先に身体が跳ねた


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