第4章 口溶けに恋して◉相澤END
「ねぇお願い、やめて・・っ」
「お前が今感じてるのは、俺の手」
瞬く間に肌に直接触れた掌が焦らすようにゆっくりと上へと這う
求めている場所には決して近付いてくれないその手が恨めしくて
もっと、触れてほしい
滲んだ視界で相澤くんを見上げると、色んな気持ちが溢れてぐちゃぐちゃになった
「なぁ、俺にしとけ」
ついさっきまで
私は他の人を心から想っていたはずで
こんな風に流される隙なんて無いほど
その人に恋焦がれていたはずで
脳裏に焼き付いたのは
その人を想って作ったチョコレートと甘いキスの味
「こんなきっかけで・・、相澤くんのこと、」
「そう仕向けてるのは俺だろ」
きっかけなんてどうでもいい、切なく呟いた彼の唇が近づき今度はそれが深く重なる
「ん、んはぁ・・っ」
もうチョコレートの味なんてしないのに、交わるそれはやっぱりとても甘くて
じんじんと頭が痺れていくのを感じた
「お前を一番想ってるのも、俺」
「そんなの、、好きになっちゃうじゃん・・」
「なればいいだろ」
早く落ちろ、下を向いて低く呟いた彼の耳が赤く染まっているのに気づいた途端、胸の奥の奥がぎゅっと掴まれて
真っ逆様に恋に落ちる音がした
「相澤くん・・耳赤いよ・・・」
「さっきの、もう一回言って」
先ほどよりも余裕の無いその目が睨むように私を見つめて、捕われる
好きになっちゃう
それとも
好きに、なっちゃった
私の口から出るのは果たしてどちらだろう、
回らない頭でそんなことを考えながら
痺れを切らした彼が甘く口付けてくれるその時を
狡い私はただ願うように待っていたのだった