第4章 口溶けに恋して◉相澤END
・・相澤くん、食べてくれないんだ
先輩にも振られた上、
相澤くんにも拒否されるなんて
お腹減ってる、って言ってたくせに
あんなに心を込めて作って
こんなに美味しくできたのに
口の中の甘ったるさがいよいよ虚しく感じられると鼻の奥がつん、とした
「泣くなよ」
「な、泣くわけないでしょ」
1ミリも動揺していない表情で彼はただただじっと私を見つめる
せっかく持って来たのに
結局全部自分で食べてるじゃん私・・
こんなことなら、山田くんの所に行けばよかった
悲しすぎる気持ちを顰めっ面に隠して最後の一つも思いっきり口に放り込む
「・・相澤くんまで、ひどい」
これじゃ何の為に来たのかわからないよ、
そう言って彼を睨みつけたその瞬間、目の前の口角が意味深に上がった
「うまいか」
「・・今更欲しがったってもう無いからね!」
そう言って膨れる私の頬に少しかさついた手が添えられる
何が起きたのかわからなくて、時間が止まったような静けさの中図書室の空調の音だけが響いた
「まだ間に合うだろ、寄越せよ」
いつの間にか肩に回されていた手が私の身体を
強く引き寄せる
かぷ、と一度唇を啄まれるとそのまま熱い舌が差し込まれた
「ん・・っ、んんっ!」
大きなその手で頭を押さえられ
くしゃりと髪を掴んだ指が私の耳を撫でる
味わうように絡まった舌が私のそれをいやらしく吸った
「思った以上に甘いな」
「っはぁ・・、え、し、信じらんない・・!」
キ、キスするなんて、!
そう叫んで座ったまま後ずさった私を楽しげに眺めた意地悪な目
「こうするしかないだろ、
お前が全部一人で食ったんだから」
まぁ美味かったよ、そう言ってにやりと笑った相澤くんがどちらのものか分からない唾液を舐めとる
その表情があまりにも煽情的で、心臓が爆発しそうになった
「わ、わたし今日振られたばっかりなのに、!」
いや、それを差し置いたって今のキスの理由になんかならない、!と、色んな感情が溢れて視界がじわりと滲む