第4章 口溶けに恋して◉相澤END
静まり返った図書室、窓際の机に突っ伏して寝息を立てるその姿を見つけて笑みが溢れる
「相澤くーん」
近付いて呼びかけると、薄く目を開いた彼が目線だけを私に向ける
大きな欠伸をして、横の椅子をぽんぽんと叩いた
「・・遅い」
ぶっきらぼうに言いながらも少し赤くなった耳が可愛くて思わず笑ってしまう
横に腰掛けると、無表情の彼が私をじっと見つめた
「・・アイツだと、騒がれて面倒なんだろ」
「わ、鋭い!」
山田くんだとなんか色々うるさそうで、と苦笑して呟くと彼は面白く無さそうに息を吐いた
「消去法かよ」
私の手元を相澤くんがちらりと一瞥する
恐る恐る彼の前にその箱を置くと
丁寧な手付きでその包みがそっと開かれた
「げ、甘そ・・」
「ひと言目それ!?」
その素直すぎる感想に思わず眉根が寄る
相澤くんの為に作ったものではないとは言え、
そんなに嫌そうな顔で文句を言われると良い気持ちはしない
「先輩は甘党なんですー」
ホワイトチョコが一番甘いでしょ、顰めっ面でそう呟くと彼が興味なさそうに返事をした
「単純」
「別に、無理して食べなくていいから・・」
箱の蓋を開けて数十秒、机に置かれたそれを眺めるだけで相澤くんは一向に食べてくれない
とうとう痺れを切らした私は、
雪のようなそれを摘むと自らの口に放り込んだ
とびきりに甘いそれが舌の上で溶ける
「うん!我ながら美味しくできてる」
自画自賛して口を動かす私を、彼は相変わらず何を考えているのか分からない表情で見つめた
「ふふ、食べたくなってきたでしょ?」
「甘そ」
「それはもう聞きました」
呟かれた同じ言葉が図書室の静寂に溶ける
一つ、二つ、三つ
そっと持ち上げたそれが運ばれる先は私の口元
窓の外は今にも雪が降りそうな曇り空、
びっしりと付いた結露のせいでまともに景色も見られなくて
もやもやとした気持ちが募っていった