第2章 これからもっと好きになる◉轟焦凍
静かな部屋に響いた彼の声が頭の中で木霊する
自然と反芻されたそれに身体中が熱くなった
「お前の気持ちが聞きてえ」
「と、轟くん・・!」
動揺した私の手が思わず離れそうになる
彼はまるでそれを分かっていたかのように
逃がすつもりはねェぞ、と楽しそうに囁いて
掴んだままの指先を少しだけ絡めた
このままじゃ、心臓が壊れる
そう思うほどに胸が煩くて
「わ、わたしも、」
「俺のこと、好きか」
「た、ぶん」
「たぶんか」
眉を寄せ、分かりやすく肩を落とした彼に胸がきゅんと音を立てる
先ほどの余裕からは想像もできないその姿があまりに可愛くて、少し笑ってしまったのがいけなかったのかもしれない
「でもきっとこれから、」
言いかけたそれを遮り、真剣な顔で私を見つめた轟くんが絡めた指先をぎゅっと握った
「たぶんじゃ駄目だ」
俺を好きかどうか試してみてもいいか、
そう呟いたと同時に強く腕を引かれ
バランスを崩した私の身体は彼の腕の中に収まった
「な、何して・・っ」
「薬師も変な気を起こすか、試してる」
「起こさないよ・・!」
焦った私の言葉に彼の眉がまた切なげに下がる
まだ諦めねぇぞ・・、
そう言った彼は少しずつ前に体重を掛けて
私は背中からベッドに倒れ込んだ
「ちょうど布団もあるしな」
「そういう為じゃないから!」
「そういう為って、どういう為だ」
至近距離で見上げたその顔
意地悪に上がった口角に鼓動が早まる
「う、うるさい」
「そんな顔もするのか・・可愛いな」
リカバリーガールが帰ってくるまでにはっきりさせるぞ、真顔でそう言った彼の唇が私のそれに重なった
「んん、っ!」
「柔らけえ、」
何度も優しく触れるそれに視界が滲む
ビー玉のように綺麗な目が少しずつ熱を灯して
前髪の先がさらりと私の額に触れた
「ん、はぁ・・っ」
「俺のこと好きか、わかりそうか」
「こ、こんな急な展開、
好きじゃなかったら大暴れしてるよ・・」
熱すぎる顔を腕で隠してそう呟くと、目の前の彼がほっとしたように息を吐く
「下の名前で呼んでいいか」
でも俺、薬師の下の名前知らねえ・・
気まずそうに目を伏せた彼に思わず吹き出した
「ふふ、もう順序がめちゃくちゃだよ・・!」
「わりぃ・・」