第2章 これからもっと好きになる◉轟焦凍
「よっこらしょっと」
「先生、会議のお時間ですよね、」
部屋の奥から出てきたリカバリーガールが轟くんに近づく
腕の火傷を睨みつけ、それを思いっきり叩くと彼が声にならない声をあげた
「・・っ」
「あんた、変な気を起こすんじゃないよ!」
こんなもんで声を出して情けない、そう言った先生がもう一度轟くんの腕を叩く
「・・っ!」
「せ、先生・・!?」
あんたもしっかりしな!と顰めっ面で私を一瞥したリカバリーガールが保健室をゆっくりと出て行く
今週は気苦労が多くて疲れちまったよ、そんな声が廊下に響いて私は少し不安になった
「轟くん、大丈夫・・?」
「・・・ああ」
気まずい沈黙の中、包帯を巻いていく
一応これでおしまいだよ、そう言って離そうとした私の手を彼が優しく掴んだ
「・・リカバリーガールがいねぇなら、
起こすだろ・・・」
そう言って下を向いた彼の耳が段々と赤く染まって
「え?」
「変な気、」
彼がそう言うと、掴まれた手に少しだけ力が入る
先ほどとは少し違う、何かを決意しているようなその表情が私の心を一瞬で騒つかせた
「ど、どうし・・」
「焦凍、って呼んでくれねぇか」
その声音が切なく聴こえたのは
きっと私の勘違い
ひんやりとした手に触れられているのに
自分の身体がどんどん熱くなっていくのがわかる
「なぁ薬師、焦凍、って言ってみてくれ」
「轟くん・・?」
お前の声で聞きてェんだ、紡がれた言葉と
真っ直ぐに向けられる視線に射抜かれて
恥ずかしくて目を逸らしながら何とか言葉を発した
「そ、それは恥ずかしいって前に・・」
「ヒーロー名だ、」
「え?」
「ショート」
それなら恥ずかしくねェだろ、そう言って薄く笑った彼に視線が釘付けになる
窓から吹き込んだ穏やかな風が二色の髪をさらりと揺らした
「・・・ショー、ト・・」
私の声に合わせ、色の違う綺麗な目が一瞬見開かれる
優しく細められたそれが、あまりにも綺麗で
そんな顔するなんて、ずるい
「やっぱり、その方がいいな」
満足そうに返された彼の声に息が上手くできなくなる
私も下の名前で呼んでみてほしい、なんて
そんなことまで思ってしまった