第8章 急襲
『す、みません
ちょっと力使いすぎちゃいました…』
あははと苦笑いすると
頼朝は険しく眉間に皺を寄せた
「…お前の帰りが遅くて
探してたら今朝の女中が
血相抱えて化け物がいるって
泣きついてきたんだよ」
『沙捺ちゃんが…』
「お前、女中を守ったんだな」
『…あいつを野放しにしたら
また犠牲者が増える…
それが嫌だった
それに見たでしょう?
私、狐憑きの力けっこう
使えるみたいです』
これで戦の時も大丈夫だと
言うと逞しい胸が顔にぶつかった
『頼朝様?』
抱きしめられたと
気づいたのは数秒先だった
「…傍にいろといった」
『仕方ないですよ今回は
私は大丈夫ですから』
「お前一人くらい守ると言ったのにな」
『…慣れてるからいいんですよ
──ほんとに来てくれてありがとうございます』
「……遅くなった」
『もしかして気にしてるんですか?』
「………」
『傍にいろって言ってくださったこと
私、実はすごく嬉しかったんですよ』
「?」
『あやかしに好かれる体質なんです
実は』
「お前、襲われるって言ってなかったか?」
『どっちも同じ意味ですよ
好きだからこそあやかしは
好んで食べるんです
玉藻のような大妖怪は
そんな事しないですけどね』
『でもそのせいで
誰も私に近づかなくなったんです』