第7章 夜這い
ぱっと空気が変わる
「久しぶりだね
生まれた子供は息災かな?」
「!は、はい!
そんなことまで
覚えていてくださったなんて」
「今度祝いの品を渡そう」
「そ、そんな
お気遣いなく……!」
ひとり、ふたりと
頼朝は1人で話をふっていく
(すご…
私は絶ッ対無理だ)
鬼才な記憶力
絶大な支持者
上に立つカリスマ性
そういったものを持っている男は
どの時代でもひと握りである
"血筋はどうでもいい"
(血筋……といえば
弟である義経様はどうなんだろう)
殺されかけたのだから
義経様が頼朝様を
恨むのは分からなくもないが
頼朝様が義経様を憎んでいる気は
あまりしなかった
(まずなんで殺さなくては
いけなかったんだろう──
あの人権力争いとかしなさそうだけど)
「」
『っはい!』
「どうした?
人酔いでもしたか?」
『い、いえ
ちょっと考え事を……』
「考え事?
その頭でか?」
イラッ
『どの頭のことでしょう??』
あまり大きな声を出すことが出来ず
静かに怒ったオーラを放つと
「……雨か」
『あ、ほんとだ
どうするんでしょう』
「頼朝様!
申し訳ございませんが
宴は中止させて明日の予定に
回していただきます
こちらに部屋を用意させて
いるのでどうぞ!」
「このような雨では
仕方がないね
遠慮なく使わせていただくよ」