第22章 手当て
与一さんはやれやれといった様子で
肩を竦める。
「ありがとな、」
『ううん、どういたしまして』
(与一さんに提案された時は、
躊躇ったけど……)
『私も、ありがとう』
「ん?」
お礼を言うと、与一さんが首を傾げる。
『義経様の怪我は気になってたし…
色々とお話することもできて、よかった』
(落ち着かない気分にはなったけど……)
『あ、与一さん。そういえば…』
義経様の傷の経過をみせてもらう約束を
したことを話す。
「願ってもねーな。むしろ、こっちから
頼みたいと思ってたとこだ
うちの大将はほっとくと、
すぐ無茶すっからさ
しっかり見張っててくれるか?」
『わかった』
笑顔で頷く私に、与一さんもにんまりと
笑った。
「家臣達には俺から上手いこと
説明しとくわ」
数日後───・・・
いつものように義経様の部屋を訪れる。
(傷の治りが順調で、本当によかったな
これなら後何日かすれば、手当て
しなくても大丈夫になりそう)
部屋の前に到着すると、
ドサッ
(…!なんの音?)
中から何か騒がしい音が聞こえてきた。
(あっ、もしかして、身体が上手く
動かせずに転んじゃったとか…)
『義経様、失礼します!』
襖を開けて部屋に足を踏み入れると……
『な゛っ───』
「どうした、義経。この程度か?」
(鞍馬!?なんでここにいんの!?)
義経様に刀を向けていたのは、鞍馬だった。
「そんなわけがないだろう」
義経様は身を翻して、鞍馬の刀を難なく躱す。
間髪入れず、素早く鞍馬の背後を取るけれど…
「遅いな」
鞍馬は瞬く間もなく振り向きざまに
刀を振り下ろした。
「まだだ」
(嘘……!?)
義経様は刀先を刀身に当て、軌道を逸らす。
そしてすかさず、鞍馬の懐に入り込んだ。
「ほう、そう来るか」
鞍馬は刀を弾き飛ばされたけれど、
顔色ひとつ変えない。
身を翻して刀筋を避けると、空中で
刀の柄を掴んだ。
(何これ……っ)
瞬く間に攻守が入れ替わっていくのを
唖然として見つめる。
(ってぼーっとしてる場合じゃない!)
『ストーップ!
二人とも何やってるんですか!?』