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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第22章 手当て





「あなたがそんなふうに感じる必要は
どこにもない」


私の言葉を静かに義経様が否定した。

手を握られ、きっと隠しようのない
肌の熱が義経様へと伝わっていく。


「俺のために今、あなたは悲しみ、
本気で向き合ってくれている
敵である俺だからこそ、この言葉に
世辞も打算もいとわかるはずだ


あなたは綺麗だ、」


まっすぐに心の中心を貫かれ、息を呑んだ。


「魂に刻まれた呪うのように、
あなたと敵に戻った時にすら俺は
それを思い返すのだろうな」


(……こんなのって、ひどい
義経様を敵に思えるはずがない

この人を放っておけない。
放っておきたくないのに───)


「送ろう」


ゆっくりと手を離し、義経様が
立ち上がろうとした時……


「つっ………」

『っ、動いては駄目です。そのままで……』


義経様をそっと押し戻し、巻いた布越しに
手のひらを当てた。


「……」

『まだ、ひどく痛みますか?』

「…いや」


虚ろをつかれたように、義経様がぽつりと呟く


「……ただ触れられているだけだというのに
不思議と痛みが和らいだ
呪力の気配もしなかったのに、
あなたは俺に何をした?」

『もともとは人の手のひらをこうやって
当てると痛みが和らぐから、
『手当て』って言うらしいですよ』

「にわかには信じ難いな」


義経様は腑に落ちない顔をしたかと思うと……


「誰かに触れられてもこんなふうに
なるとは思えない」

『義経、様……?』


優美な形をした指が私の頬に触れて、
どくっと心臓が跳ねた。


「あなたは、
人を癒すすべを持っているんだな
……俺とは、何もかも違う」


触れられたところが熱を帯び、
瞬く間に身体中へ巡っていく。


『どうして、
そんなふうに触れるんですか…?』

「わからない
───嫌だったか?」

(嫌じゃないから、困ってるのに…
…どうして、私はもっと触れられたい
なんて思ってしまってるの)


「……」


(あ……)


心を読まれたように、ぐっと距離を詰められ…

息を呑む間に頬を両手で包まれた。

『っ、義経様、お怪我に障ります……』


咄嗟に口から出たのは明確な拒絶の言葉とは
言えないものだった。

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