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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第22章 手当て





「自分にないものを何でも持っている
頼朝公を尊敬し、力になりたいと
戦場で刀を振るった

そのうちに、ふと気がつけば俺を
将と慕ってくれる者たちが後ろにいた
こんな俺を信じてついてきてくれる、
大勢の仲間が」


(義経様は生まれつき、異質な魂を持ってる
そんな義経様にとって、家臣との絆は
何よりも大切なものなのかもしれない
だけど頼朝様は……)

以前、お祭りで話したことが頭の片隅を
掠める。

『平氏との戦いのあと……義経様は
追放されたって仰ってましたね』

「ああ
血を分けた兄に切り捨てられた時は、
谷底に突き落とされたような衝撃だった
けれどそれ以上に……

戦で死力を尽くした家臣達が頼朝公の命で
踏みにじられ、殺されたことが
許せなかった」


(あ……)


指先が白くなるまで、義経様の拳が
強く握りしめられていた。


(義経様は人に対してどこまでも
真っ直ぐな方だから…
尊敬していた頼朝様と敵対した時に、
きっとすごく傷ついたはずだ
だけど……)

躊躇いながら義経様を見つめる。

『私は幕府と関わりを持って、
まだ日が浅いです
でも、頼朝様がなんの理由もなく
そういうことをする方にはどうしても
思えないんです』


頼朝様には二面性があってなかなか
本心を掴めないけど、
とても公平な人だということも、
今の私は知っている。

(何が二人をすれ違わせてしまったんだろう…)


『そういうことを考える時間は終わった』

何百回も自分の中で繰り返して来た
問いと向き合うように、ただ冷然と
義経様は答えた。


「わかっている。あの人は十万の命の
ために一万を切り捨てる
けれど……その一方に俺の大切な者達が
含まれているのならば、俺は刀を
取らなければならない」

表情は変わらないのに、義経様は
どこまでも苛烈な怒りと悲しみを
胸に秘めている。


『怖くは……ないんですか?』

(みんなの命を背負って、かつて
尊敬した兄と戦うことが
戦場でぎりぎりの生死のやりとりを
することが)

「どんなに苛烈な戦場の中でも、
俺はただの一度も恐怖を感じたことがない」

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