第22章 手当て
淡い笑みを浮かべる義経様に、
胸を撫で下ろす。
(無事って聞いてたけど、やっぱり
自分の目で見ると安心するな)
「出迎えは多い方がいいと思ったんで、
誘ったんですよ」
「そうか。気を遣わせてしまったな」
『いえ……。とんでもありません』
(さっきはついほっとしちゃったけど……)
幕府のみんなのことを思うとやっぱり
何を言っていいか分からずに、
気まづくなってしまった。
「一度部屋に戻り着替えてくる。
俺は留守の間の話は、後ほど」
「了解です」
(あれ?)
通り過ぎようとする義経様に、違和感を抱く。
(……右腕を庇ってる?)
いつもは優雅と言っていいくらい
淀みなく静かな義経様の動作が、
ほんのわずかに乱れていた。
『待ってください!』
「…なんだ」
振り返る際の動きを見て疑惑が確信に変わる。
(やっぱり!)
『義経様……腕、怪我してますよね?』
「「………」」
私がまっすぐ見つめて尋ねると、
義経様はすっと視線をそらした。
それを見た与一さんが、すぐさま
義経様のもとへ行く。
「与一、待……」
「失礼しますよっと」
きっぱりと言いながら与一さんが
義経様の武具を器用に外し、
袖口をめくると───
(…! ひどい怪我…)
「これは……」
深い傷を見て、与一さんは顔を顰めた。
「そういや、家臣から報告で聞いてたっけ
義経様が味方を救う為に、たった一騎で
敵の真っ只中に飛び込んだって」
(そんなことをしてたの!?
それでこの怪我で済んだのは不幸中の幸い、
だよね
もし、攻撃がずれてたら……)
万が一のことが脳裏をかすめ、肌が粟立った。
「怪我はないって聞いてたんですけどね」
「混乱を避けるためだ。言ったところで
怪我は治るわけでもない」
(だからって………っ)
『こんな怪我をして、痛くないわけが
ないじゃないですか!
誰か呼んで、早く手当てをしないと』
「騒ぎにしたくない
助けた者も俺の怪我を知れば、
気に病むだろう」
『そういう問題じゃ……』
(義経様はご自身の身体が大事じゃないの……っ?)
「怪我には慣れている。だから───」
「義経様」
義経様を遮るように、与一さんが口を開く。