第22章 手当て
「じゃ、に手当てしてもらったら
どうです?
それなら何の問題もありませんよね」
「何?」
『え?』
与一さんの提案に、私と義経様の声が
綺麗に重なった。
『手当てって……私が義経様を!?』
「与一、何を言っている。
そんなことをさせられるわけがないだろう」
義経様を見ると、珍しく困惑した表情を
浮かべている。
そんな義経様に与一さんがびしりと
指をつきつけた。
「その怪我だって放っといたら誰かに
知られるかもしれないわけだし
一人で手当てするにも限度があるし
家臣の奴らに気づかれずにどうにか
するには、にお願いするのが
一番ですって」
「のことは人質として
預かっている。薬師として呼んだわけ
ではない」
(確かに驚いたけど……
このまま何もしなかったら、
怪我が悪化する可能性だってあるよね)
意を決して口を開く。
『義経様、私に手当てをさせてください』
「
自分が何を言っているか、わかっているのか」
『……そのつもりです
義経様にはこれまで何度も助けて
いただきました
敵だからこそ、これが感謝の気持ちを返せる
最後の機会になると思います』
少し緊張しながら義経様の顔を見つめた。
『後悔しないように……今、私に薬師として
振る舞うことを許してください』
(戦になったら私達は戦って傷つけ合うことに
なるから)
「……わかった
患者として、あなたの治療を
受けさせてもらおう」
義経様が真正面から私の目を覗き込む。
「申し出に感謝する、」
(よかった……)
『はい、お任せください!』
「心強い言葉だな。
あなたは頼りになる薬師だ」
様子を見守っていた与一さんが
にやりと笑みを浮かべた。
「そんじゃ、
俺は廊下で見張りしてますんで。
何かあれば呼んでください。」
与一さんに促されて、私達は義経様の部屋に
向かう。
(義経様はここで生活しているんだ……)
傾いた陽が美しい調度品に彩られた室内を
染め始めている。
初めて訪れる義経様の部屋に、
自然と背筋が伸びた。