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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質





(っ、そんな言い方をするなんてずるい…)


嬉しくて、
断ることもできなくかってしまった。


『っ………ありがとうございます』

「では、行こうか」

『はい……!』


差し出された手に自分のそれを重ねて
立ち上がる。



(……あったかい)


───その瞬間に目が合う。



それだけで考えが見透かされてしまいそうな
気がして、思わずぱっと目を逸らした。


(何だか、くすぐったいな)


肩を並べて廊下を歩いていると、以前、
義経様とお祭りの夜を歩いた時のことを
思い出す。


(あの時も、こうして送ってくれたっけ


義経様のことを本当には
まだ分からないけど…)


孤独や痛みを知っているからこそ、
義経様は優しい心を持っているのかも
しれない。


それはどうしようもないほどもどかしくて、
愛おしくすら感じた。







─────────────────




ある日の昼下がり───・・・




『戦、ですか?』

「ああ」

部屋を訪ねてきた義経様から、
戦に出ることになったと告げられる。

「近隣の国から力を貸して欲しいと
頼まれた。数日、館を空ける」


(まただ……)


ここのところ、義経様は与一さんに
内政を任せて、頼朝様との戦に備え
他国に貸しを作るために、自ら戦に
赴くことが多かった。

「留守の間、何かあれば与一に」

『…はい
わざわざ教えてくださって、
ありがとうございます』

(義経様は戦に出ることが決まる度に、
こうして私に声をかけてくれる)

「気にするな。
人質として身柄を預かっている以上、
この前のように不当な扱いをするわけには
いかない」

どこまでも律儀な義経様に、
複雑な思いを抱く。


(無事に帰ってきてほしい
でも、そう願うことは、幕府のみんなへの
裏切りになってしまう)


『戦に行くのは……大変ですよね』


(って何変なこと質問してるの!?)


迷いに迷った挙句、変な質問をしてしまい
後悔する。

だけど義経様は気にした様子もなく、
淡々と返す。


「大変だと思ったことはないな」

『そうなんですか……?』

「魚が水の中で生きるように、俺に
ふさわしい場所は戦場だから
いるべきところに赴くだけだ」


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