第21章 人質
穏やかに微笑む義経様から、
鞍馬に対する思いが伝わってきた。
(孤独な環境の中で初めて誰かと
繋がった相手が鞍馬だったんだ
だから、あやかしとか人間とか関係なく……
義経様は鞍馬と友達になった)
『義経様にとって鞍馬との出会いは、
かけがえのないものなんですね…』
「そうだな。そして今では、
弁慶も与一もそばにいてくれる
…幼い頃の自分には、
想像もつかなかっただろう
大切な者が数え切れないほど
増えていくことを」
『義経様……』
数え切れないほどの星が瞬く下で、
義経様はゆっくりと口を開く。
「俺は頼朝公を討つため鞍馬と契りを結び、
異能の力を得た
力を使い果たし、目的を遂げた最後に
一番旧い友である鞍馬が俺の魂を
望むのであれば……
それはそれで喜ばしいことにも思える」
(義経様は魂が異質だから、他の人と
違う道を歩むことしかできなかったんだ
誰にも理解されないっていうのは、
とっても苦しいことだ)
切なさに胸が締め付けられ、深い息を吐く。
「……? 」
『え?』
「どうして、
あなたが悲しそうな顔をしている」
(っ………)
頬を手を触れられ、その場所から静かに
熱が広がっていく。
(私も、昔のことを思い出した…
でも私の悲しみと義経様の悲しみは
同じとは限らない、でも……)
『………すみません。
その時の義経様のお気持ちを考えていたら』
「………」
私の顔をじっと見つめた後、
義経様は眉を寄せた。
「───少し、話しすぎてしまったようだな。
そこまであなたが気を病むとは
思ってなかった」
『っ、いえ……』
そっと首を横に振った。
『義経様の話が聞けて良かったです
話してくださって、ありがとうございます』
「…礼を言われるのは戸惑う
あなたが共感してくれたことが
少し嬉しいと思ってしまったのは、
俺の方だから」
(っ……そんなふうに、
感じてくださったなんて)
向けられた儚い笑みから目が逸らせなくなる。
吸い込まれるように義経様の瞳を見ていた。
「夜も深まってきたな。
そろそろ戻るとしよう
、部屋まで送っていく」
『私なら一人でも……』
「俺があなたを送っていきたいんだ」