第21章 人質
『でも、一応逃げたりとかしなくて
大丈夫ですか?』
「案ずることはない」
義経様は平然とした様子で頷く。
「何しろ、あなたと俺には大妖怪と呼ばれる
程のあやかしが憑いている
強い呪力の匂いが魂に染み付いているから、
力の弱いあやかしは悪さができない」
『一般的にはそうですけど…』
(鎌倉にいた頃一回襲われてるんだよなあ)
「放っておけばいずれいなくなるだろう」
そう言われつつも警戒を解くことができず、
あやかしを見つめていた
その時───
「!っ」
『っ』
影のようなものがに
襲いかかった
『やっぱこうなるのよ、ね!』
バチンっ
軽い結界をはったが長くはもたなそうだ。
「…、」
『ごめんなさい
説明はあとでお願いします』
「…承知した」
義経はの様子に戸惑ったものの
冷静に今すべきことに向き合う。
「見たところ俺というより
が狙いか…」
『そうみたいです
あと少しで結界が消えます
だから───』
「ああ、その時を見計らい
俺が斬る」
『え、』
(隙を作ってくれるだけで良かったんだけど)
よく見ると義経様の目に怒りのような
苛烈さがあった
(っ、戦の時とは少し違うけど、怖い)
そんなことを考えているうちに
結界が消える
『っ?』
(な、なんで)
ぎゅっと抱きしめられたかと思うと
義経様はあやかしに刀を向けた
その刹那───
シュッ
「───ここにお前の餌となるものはいない
消えろ」
義経様の刀があやかしを両断し
黒い影は粉々となって消えた
抱きしめていた腕が離れる
「、怪我は」
『な、ないです』
(なんだかこの会話既視感があるな)
「それで、なぜあなたはそこまで
あやかしに襲われる…?
初めてあった時はたまたま出くわしたのかと
思っていたが…」
『……説明しますね』
(話すのは頼朝様の時以来だな)
は自分の体質のことを
義経に話した
義経は時折頷きながら真剣に話を聞いていた。