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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質


「そうだな、美味い」

(義経様も同じことを思ってくれてたら
いいのに、なんてどうしてこんなこと考えてしまうんだろう)

「不思議だな。あなたがいると……」

『え……?』

義経様が何かを言いかけたその時───

「失礼いたします」

広間の襖が遠慮なく開けられた。

その向こうで一人の男性が
控えているのが目に入る。

(身なりからして、使用人みたいだな)

最初に口を割ったのは与一さんだった

「どうした?」

「恐れ入ります。
義経様に火急の文が届いております」

「あー…なら、まずは俺が確認するわ」

立ち上がろうとした与一さんを、
義経様が片手で制する。


「いい」

「…………」


与一さんは軽く眉を寄せ、
それ以上は何も言わなかった。

(え………)

先ほどまで温かな眼差しだったのに、
義経様は淡々と男に視線を当てている。


(なに?この違和感は)


「………ここへ」

「はっ」


男は広間に足を踏み入れ、
義経様に歩み寄ると───


「源義経!覚悟───」

(きゃ……!?)

懐に隠し持っていた短刀を抜き放ち、
男が義経様に襲いかかった。



(っ、嘘、でしょ……)

───瞬間、義経様の無機質な瞳が男を映す


(なんで………っ)


そこには恐怖の色が何も無いことに気づき、
ぞくりと冷たいものが走った。


「遅い」


慌てる様子もなく、片膝をついて
立ち上がりかけると同時に刀が抜かれる。


キンッ


「なっ………!」


短刀を弾き、義経様は男の喉元に
刀を突きつけた。


「お前が下手人だな」

「くっ………」


感情のない声色で問いかけられ、男が呻く。


「沈黙は肯定とみなす」


(さっきまではあんなに温かい目を
してたのに……)

義経様が纏う凍りついた空気に、
言葉を失った。

「お見事
つっても、義経様自ら相手することも
なかったでしょうに」

「俺の客なのだから、
俺がもてなすのは当然だ」

「ま、俺としては働かなくて済むのは
ありがたいですけど」

「やはり暗殺を企むだけあって、
あくびが出そうなほどの雑魚だったな。
まったく興をそそられん」

平然と言葉を交わしている義経様達に
思わず口を挟む。

『っ、待ってください、その人はつまり……』

「ああ、こいつが毒殺未遂の下手人だ」

「っ………」
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