• テキストサイズ

イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質





「あー、やっぱ弁慶のつまみが
恋しくなるな」

「そんなものより、あの力任せに
振るわれる薙刀と遊びたくなった時に、
弁慶がいない方が問題だ」

(また弁慶さんの話をしてる。
反乱軍の人達って、仲がいいんだな

義経様と同じように全員がお互いのことを
大切にしてるんだ)

その様子を見ていると、胸がちくりと痛む。

(……幕府のみんなも、そうだった)

楽しそうに話す姿は、
どちらの軍の人達も変わらない。

人質生活が終わってしばらくしたら、
幕府と反乱軍の戦が始まる。

その日を思うだけで胸が締め付けれた。


「どうした?飲まないのか」

(あ……)


義経様の視線の先には、空になった器がある。


『少し考え事をしていました』

「考え事?」

『はい……』

「……そうか」

口を閉ざす私に、義経様はそれ以上
追求することはなかった。


(もしかすると、私が幕府のことを
考えてたって義経様はわかってるのかも
しれない………)


また義経様の優しさを感じる


「俺はもう少し飲もうと思う。あなたは?」

『あ、じゃあもう一杯だけ』

(……もう少し、義経様と話したいから)


口に出してはならない言葉を、
お酒と一緒に呑んでしまおうと思った。


「では、注ごう」

(義経様が!?)

『ま、待ってください』

とっくりを持つ義経様を慌てて止める。

「……? 何だ」

(さすがに恐れ多いっ)

身分の基準は未来のには
疎いものだが、なんとなく
頼朝様や義経様には上に立つ人が持つ
特有の雰囲気がある

『そういうわけにはいきません!
お酌なら私が……』

「遠慮ならいらないと最初に言ったはずだ」

手のひらに盃をのせられ、触れ合った指先が
不意に熱を帯びた気がした。

『ありがとう、ございます…』

「ああ」

とくとくとお酒が注がれていく。

『……次は私が』

「では頼もう」

(なんだろう、少し緊張する。
宴にいきなり連れて来られた時とは
また違う緊張だけど……)

今度は私がとっくりを受け取り、
義経様の盃を満たした。

そのまま視線が絡み、二人とも
ゆっくりと盃を口に運んで…


『……美味しい』

(さっきよりも不思議と優しい味がする
気がする…)


/ 320ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp