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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質







「弁慶の料理が美味いのはわかる。
けれど迂闊に褒めると次から倍の量を
出してくるのが困りものだ」

「あー……。
田舎のばあちゃんかよって言う」

(弁慶さん……)

私の中で勝手に抱いていた弁慶さんの
印象が音を立てて崩れていく。

『あの…弁慶さんってどんな方なんですか?』

「どんなって……意外と世話焼き?
義経様にいつもお小言言ってますよね」

「………ああ」

(遠い目をしてる……!?
過保護っぽいのかなとは思ってたけど、
本当だったんだ……)

一瞬迷ったが気になったので
詳しく聞いてみることにした。

『…ちなみに、どんなお小言なんですか?』

「それは………色々だ」

(余計に気になるやつだ…!)

「話を戻すけど、
世話焼き以外のことで言えば、
弁慶は頑固なとこがあるよなー
今は人質であっちにいるけど、
たぶんずっと与えられた部屋で
座禅とか組んでるわ」

「想像に難くないな」

鞍馬は手にしていた酒を飲み干すと、
迷うことなく新たなとっくりに手を伸ばす。

「物足りんな。与一、付き合え」

「おっ、飲み比べだな?いいぜ、やってやんよ
義経様とは判定をお願いしますね」

『い、いきなりだね』

「いつものことだ」

義経様は呆れも見せずただ慣れたように
傍観していた。

(日常茶飯事なんだ…)

与一さんもとっくりを引き寄せ、
それぞれの盃を満たすと一気に飲み始めた。

「気にせず、あなたはゆっくり飲めばいい」

『あ、はい!
義経様も参加しないんですね』

「あの二人に付き合ったら大変なことになる」

(確かにすごい速さで盃が空になってる!!)

「あなたは強いのか?」

『全然強くはないですけど、
嫌いではないですよ
それに……お酒の席は好きです。
あまり飲めなくても、
いるだけで楽しいですから』

「そうだな。
気の置けない者達との宴はいつだって
楽しいものだ」



(あ………)


与一さんと鞍馬を見る眼差しは、
とても温かい。


ふと、
義経様と戦場で出会った時の記憶が蘇る。


────────────


「手当てには礼を言う
家臣の命は俺の命。
あなたはそれを一つ救った。」


──────────────────


(義経様にとって、与一さんたちは
………仲間は、大切な存在なんだ)



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