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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質





『っ、わかった。……鞍馬』

「思い違いをするなよ。
お前が俺と親しくなる
許可を与えたわけではない
あくまでお前が───」

『私が獣と同じで……
対等な存在じゃないことが明らかだから、
呼び捨てにされても気にしないってこと?』

「そうだ。
獣にしては物分りがいい方だな
とはいえ、玉藻と契ったことについては
認めんが」

(頑なだな……)


父親が娘の結婚相手を反対しているように
しか見えなかったが怖かったから言わない

少しだけ、鞍馬の性格がわかったような
気がする。

(親しくなるのは難しそうだけど)

ようやく気持ちがほぐれ始め、
お酒を一口いただく。

ほのかな酸味と柔らかい舌触りに、
自然と顔がほころんだ。

(わ、飲みやすい!)

もともとお酒には強くなく、
大学の集まりでもあまり進んで飲まなかった

『このお酒、すごく美味しい…。
それに器もとても綺麗ですね』

「その器は与一がつくったものだ」

『えっ、与一さんが!?』

「まあな。
ちなみに義経様が使ってるのも
与一さん作なんだぜ?」

『そうなんだ。
与一さんって器用なんだね』

器を掲げて、まじまじと見る。
現代ではあまり見かけられないほど
綺麗で丁寧に作り込まれていた。

『こんなに素敵な器で飲むから、
お酒よりも美味しく感じるのかも』

お酒をもう一口味わい、しみじみと呟く。

「味など、どの器で飲もうが
変わるはずないだろう」

「情緒ってもんがねえな。
ま、いいけど」

(いいんだ……)

少しお酒が入ったせいか、
はたまた与一さんの緩さにつられたせいか、
さらに肩の力が抜けていく。

(我ながら現金だけど……
今なら、この時間を楽しめるかも)

人質としての後ろめたさはあるものの、
そんな思いが芽生える。

『このおつまみも美味しいですね』

「んー、美味いっちゃ美味いけど……
やっぱ弁慶が作ったやつが一番なんだよなあ」

『弁慶さんって料理上手なんですか?』

(いかにも武士!って感じがするから、
意外……)

「ああ、台所に立つところをよく見かける」

「いやいや、そこは美味しいって
言ってやったらどうです?
義経様が美味いって言ったって知ったら、
あいつ泣いて喜びますよ」


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