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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質





まっすぐ向けられた瞳は、
嘘偽りが感じられないほど透き通っていた

「最初の出会いを抜かしても、
とは奇妙な縁が二度あった」

『戦場で会った時と、お祭りで会った時…
ですよね』

「ああ、あの時も驚いたが……
人質交換の件を頼朝公が呑んだ時も驚いた」


(っ………どういうことだろう)


『交渉を持ちかけたのは義経様の方から
なのに………?』

「あなたは幕府と反乱軍の戦にとって、
鍵となる人物だ
荒事に慣れているならともかく、
あなたはただの女だから
様々なことを鑑みて、交渉決裂する可能性が
高いと考えていた」

(……憎みあってても、やっぱり兄弟だな)

義経様も頼朝様もお互いのことを
よくわかっている。

『義経様が仰る通り、頼朝様は…
私の心が壊れないようにと、
一度は断ろうとしていました』

「ならばどうして、あなたがここにいる?」

『自分で望んだからです』

「………」

義経様は少しだけ目を見張った。

人質になると決めた時の気持ちを
思い出しながら、言葉を紡ぐ。



『私には政のことはよく分かりません
だけど交渉決裂したら、
どうなるかってことぐらいは想像できます
もし断れば、飢えで苦しむ人が増えていく…

自分ができることが目の前にあるのに、
見て見ぬふりはしたくなかったから』


(……それに義経様なら、
約束を守って人質を殺しはしないと
信じられたから)


「また誰かのために動いたというわけか」

義経様の眼差しが穏やかなものへ
変わっていく。


「…あなたは強い人だな」

『そんなことありません。
私よりも強い人はたくさんいます』

「謙遜しなくていい。
あなたは誰よりも心が綺麗で……
自分で思っているよりも、ずっと強い
祭りの後、次に会うのは戦場だと
思っていたけれど……
結果、こうしてを平泉に
迎えることになった」

(本当に不思議な縁だよね…)

「先ほど言っていたな。
俺が助けるとは思わなかった、と」

『はい……』

「確かに俺は、そう思われても無理は無い
態度を取っていた
しかし………」


(っ………)


義経様の片手がごく自然に私の頬に触れた。



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