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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質






人に対して、恐ろしいほどまっすぐな
義経様がそこにいる。


冬の冷気をまとい、
義経様は家臣達に鋭く目を細めた。

「この女は俺が幕府からの正式な
人質と定めた人間だ
理由なく傷つければ我が軍の品位に損なう。
「相応に扱うように」と命じたのは、
そういう意味だ」

「………っ」

家臣達は義経様に向かって、
一斉に頭を下げた。

「っ、申しわけございません!」

「お前達が俺を案じて下手人を
探そうとしたことはわかっている
ゆえに処罰を与えるつもりはない
けれど、いたずらに動じることは
今後は避けろ。
───いいな?」

「しょ、承知しました」

「では、に謝罪を」

(え………)

驚く私に、家臣達が次々に頭を垂れた

「大変失礼をいたしました……!」

「どうぞ、平にお許しを願います……」

(っ、なんて言えばいいんだろう)


戸惑っていると、義経様が半歩前に
進み出して私の正面に立ち……


『あ……』


真剣な眼差しで私の手をとった。


「」

『っ、…はい』

「軍を代表して、俺からも非礼を詫びる
誠実に欠ける扱いをしたことを、
どうか許せ」

『っ、いえ…。
わかっていただけたなら
私はもう大丈夫です!』


慌てて首を横に振る。


『ありがとうございました、義経様』

「あなたの寛大さに礼を言おう」

(義経様…)


義経様を取り巻く空気が少し穏やかな
ものに変わるのがわかった。


私からするりと手を離し、
義経様は家臣に向き直る。


「お前達は下がっていい。
引き続き調査を」

「はっ」

家臣達はもう一度深々と頭を下げ、
静かに部屋を後にした。

義経様と二人きりになり、
小さな沈黙が訪れる。


(こうして二人きりになるのは、
お祭りの時以来だっけ
あの時は普通に話せていたけど…)


『義経様が助けてくださるとは
思いませんでした』

ぽつりと本音がこぼれ落ちる。

『その…以前お会いした時よりも、
近寄り難い感じがしてたから』

「………」


義経様は睫毛を伏せ、
考えるように話し始める。


「率直に言えば、
あなたに対する態度を決めかねている」




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