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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質



(痛めつけてって、なにをするつもりなの…?)


逃げ出すことも申し開きすることも
叶わないまま、思わず肩が震える。


「───では憶測で嫌疑をかけた、
ということになるな」


(………義経様?)


家臣達はぎょっとしたように目を見開いた。


「しかしっ、こいつが下手人ではないと
証明ができない限り疑いを
晴らすことなど……!」

「そうか」


義経様は口を開くなり、
湯薬が入った器を掴むと───



(えっ)



───何の躊躇いもなく、
その中身を飲み干した。


「よ、義経様!?」

「………苦いな」


(いや、そりゃ薬ですから)


つっこみつつもは
唖然とその様子を見ていた。


静まり返る家臣達に、
義経様はじっと視線を注ぐ。


「これで証明はできたか
目眩も痺れもない。
ただの湯薬というのは真だろう」


(義経様、信じてくださったんだ……っ)


ほっとして、強ばっていた身体から
力が抜けた。


「あ……その、私達は…」

「寄って集って無実の女を詰問するのは
愚かなことだ
かつて理不尽な嫌疑をかけられ
虐げられた経験が、俺たちにも
あるということを忘れたか」

「そ、それは」


(っ………もしかして、
頼朝様に追放された時のことを言ってるの?)


家臣達ははっとした顔をする。


「たとえ何者かの手引きがあったとしても、
複数人の監視がついている状況で
毒を盛ることは、その手の訓練を
積んだ者でなければ難しい
の経歴は与一がすでに
洗っているし、不審な点は見当たらなかった」


(確かに仮にやろうと思ったって、
私にできるはずがない)


経歴も不審な点がなかった、というよりは
見つからなかったのが筋だろう
なぜならはこの時代の人間では無い
その事実は鎌倉幕府にいる仲間だけが
知っているのだから。


「薬学の知識があることについては……」

義経様と目が合い、少しどきりとした。

「目の前に傷ついた誰かを助けるために
身につけている………
それで合っているか、」

『……!、はい』

(まだ覚えててくださったんだ
敵の私が吐いた甘い言葉なんて、
すぐに忘れ去ってても
不思議じゃないはずなのに───

っ……やっぱり、この人は私の知ってる
義経様だ)
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