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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質



(っ、義経様はただ聞いているだけなのに、
空気が鉛みたいに重い………)


恐る恐る一人が顔を上げる。


「っ……この者の荷物に、
薬を作る道具が紛れているのを見たという
証言を得ました
確認の為に部屋に訪ねたところ、
まさに毒物を作っている最中だったのです!」

『違います、これは毒じゃありません!
私はただ湯薬を作っていて……』

「では、なぜ薬を作る道具を持っている?
一介の姫が所持するには、
あまりに不自然だろう!」

『っ、それは………』


(しまった、
薬師だからです、なんて言えるわけない!)


戸惑いを隠せず口をつぐむ


「どうやら図星のようだな」

言い返せないでいる私に勢いを
盛り返した家臣達はせせら笑う。

「最初から大人しく認めればいいものを」

「義経様、こいつは、
『自分には毒を仕込める手段はない』
などと言い訳を並べるどころか、
義経様を心配する素振りをわざと
見せつけて、媚びを売ろうとしていたんです」

「毒殺をしようとしていたくせに
気づかれた途端、手のひらを返すとは
なんてしたたかな女だ!」

『っ、そんな』


家臣達の言葉が乱暴になっていく。


(この人達には何を言っても逆効果だ
でもこのままじゃ、本当に下手人に
されてしまう……っ)


「…………」


こちらに向けられた義経様の眼差しには
感情がない。


(義経様も私が犯人だと思っているのかな)


唇をかみしめていると、
頼朝様の言葉が胸の内を掠めた。







「周りは敵だらけ、
味方なんてただのひとりもいやしない
いくら人質とはいえ、
いざとなれば命の保証もねえ
そんな状況で───
お前は本当に大丈夫だって
胸張っていえるのか?」





(味方なんて、誰一人いない。
そんなのは最初からわかっていたことだ

義経様だって………………)


嫌な考えがよぎり、手のひらをぎゅっと握った


(っ、なんとしてでも、
この場を切り抜けなくちゃ)


『あの、義経様───』

「『毒を仕込む手段がない』と……
その言葉が言い訳だとするならば、
どのような手段をこうじて俺の膳に
毒を盛ることができたのかは
解明できたのか」

(……っ)


「いえっ、それはまだですが…」

「この女を痛めつけて吐かせれば
すぐに分かることです」
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