第21章 人質
(何事!?)
いきなり数人の家臣達が部屋に踏み込んできて
を睨みつけた
『な、なんですか?』
「おい、あの手にあるものを見ろ!」
家臣の一人がの手元をみて、
声を上げる。
「おお、噂通り毒を作っているぞ!」
(毒!?)
『っ、違います!これは湯薬で………』
(この歳で毒劇物取締法にかかりたくないっ)
焦って弁明するけれど……
「ええい!黙れ!
貴様が義経様毒殺未遂の下手人だろう!」
(なっ、義経様毒殺未遂事件!?
そんなことがあったの……?)
『義経様は無事なんですか!?』
「ふんっ、白々しい。
心配する振りをしおって」
『そういうわけじゃっ……』
(いや、この人達頭に血が上って
話が出来る状態じゃない、
何を言ってもここは───
敵だらけだ)
家臣達は険しい顔で、一斉にを
取り囲む。
そのうちの一人がの腕を掴んだ。
(いっ、)
ぎりぎりと掴まれた腕に指が食い込む
「貴様が義経様の膳に毒を盛ったのだろう?
大人しく吐け!」
『だからっ、
違うって言ってるじゃないですか!
そもそもそんな事件知りませんし、
私は自由に動くことだってできません
外に出る時だって、見張りがいます。
毒を仕込めるはずがないです!』
「言い訳ばかりしおって。
幕府からの人質がいうことなんざ
信じられるか」
(っだめか)
聞く耳を持たない家臣達の様子に、
幕府への強い憎しみを感じる。
「本当のことを言え!さもなくば───」
『っ、や………』
(まずい)
ぞくっ
険しい顔をした家臣の一人が、
腰の刀を抜き放つ。
(うそ、)
背筋が凍り、喉が強ばったように
これ以上声が出なかった
(ど、どうしよ、投げ飛ばす?
いや、だめだ。人質の身でそんなことしたら
全部無駄になる
どうすればいいの?)
その時──────
「騒々しい」
(え…………)
に刀を向けようとした家臣の腕を
誰かが後ろから強く掴む。
「……」
『義経様!』
義経様はあたりを見回し、
ゆっくりと口を開いた。
「その女に、何をしている」
静かな声が部屋に響き、
今まで怒声を上げていた家臣達が、
一斉に口を閉ざした。
「説明しろ」