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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第21章 人質


(ここが反乱軍の本拠地、正真正銘、
誰一人、味方がいないんだ
幕府のみんなには『大丈夫』って
宣言したはずなのに……っ)


どうしても身体が強張ってしまう。



「座れ」


『っ、はい』


家臣に連れていかれた席……
義経様の真正面に怖怖と座る。


「そう緊張しなさんな。
別にあんたのことを取って食おうって
思ってねーからさあ」


(こんな状況で緊張するなって方が
無理だと思うけど……!)


「これは一体、何の時間だ?」

「ただの顔見せだろう?
いいから睨むのはやめとけって、はい、
笑顔笑顔ー」

「くだらん。
ただの女の顔など覚える気にもならんな」

飄々とした与一さんの態度とは対照的に、
鞍馬は心底つまらなさそうに眉を寄せた


(やっぱり鞍馬は強いあやかしだし
私の体質には気づいてなさそうだな)


そもそも興味がなく、眼中にないのだろう

少しほっとしつつもまだ緊張はとけない


(にしても相変わらず威圧感すごいな
同じあやかしでも玉藻とは大違いみたい)


「はー、ほんっとに愛想がねえ。
悪ぃな、」

『い、いえ』

(与一さんだけは不思議と空気が緩い…
そういえば、初対面の時もそうだったっけ)


「……」


(あ………)


義経様がひとたび視線を廻らせるだけで、
綻びかけた空気が引き締まる


「皆に伝えていた通り、
この者は頼朝公に縁のある姫だ」


(……なるほど、ただの町娘を人質にとるのは
おかしいし、そういう設定になってるんだな)


家臣達から一層冷ややかな眼差しを向けられ、
身をすくめた。


「言うまでもないことだが、
人質として相応の扱いをするように」

「はっ」

一切の温度を感じさせない義経様の瞳が、
改めて私をとらえる。


「あなたには監視がつく。
人質としてわきまえた行動をとってもらう」

『はい』

「わかれば、それでいい」


(お祭りの夜に、少しだけ義経様の心に
触れられたって思ってた)

だけど目の前にいる義経様は声も固く、
敵将として冷淡に振る舞っている。

(心のどこかで甘く考えていたのかもしれない
いくら敵将でも、義経様なら……って
覚悟を決めて、ここに来たはずなのに…)

義経様の態度に自分で思っていた以上に
衝撃を受けてしまっていた。



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