第21章 人質
「妙な女だ
ま、戻ってきたらせいぜい
功労者として迎えてやるよ」
(功労者って……
少し大袈裟な気もするけど嬉しいな)
『ありがとうございます
頑張りますね』
意地悪な口調の中に頼朝様の気遣いが
感じられたことに励まされた。
(義経様…)
─────────
『殺し合う以外の道はないんでしょうか?』
「とうにその道は閉ざされた」
『っ、でも』
「どうして」
(なぜ)
「どうしてとこまで心を砕く?
あなたは巻き込まれただけだろう
俺と頼朝公が憎しみ合おうが
殺し会おうが……関係ないはずだ」
『っ、そうだとしても』
は酷く苦しそうな
哀しそうな顔を浮かべる
─────────・・・
あの日の記憶は夢のようで
だが繊細に覚えてもいた
私を助けてくれた時も哀しそうな顔も
子供に優しくしてたのも間違いなく
全部義経様だ
(きっとあの人はどこまでも律儀で誠実で、
きっと心根は優しい人なんだ)
(最初は怖い人だとおもった
けど、本当はそうじゃない)
どうしてこうも敵将のことが気になるのだろう
と思っていた
(ううん、違う。
敵将だからこそ気になるんだ)
───ただ怖いだけの相手なら、
何も考えずに戦うことができたはずだから。
だからといって知らなければ良かった
とも思えない。
(反乱軍との戦までに
ちゃんと気持ちの整理をしないと)
少し遡り、義経が平泉に帰った頃───
平泉に戻った義経が自室で休んでいると、
弁慶が勢いよくやって来た
「義経様!」
「どうした、弁慶」
「聞きましたよ、
単身で京へ行ってきたって」
「単身ではなく末春と…」
義経ははっとして口を閉ざすが遅かった
「本当なんですね」
「どこでそれを…?」
「鞍馬から聞き出しました」
弁慶の眉間に深いしわが刻まれる。
「ここ数日不在で何をしているのかと思えば…
あそこは仮にも敵の陣地ですよ?
義経様の身に何かあったら
どうするんですか!
義経様にも考えがあるでしょうし、
絶対に行くなとは言いません
でも、一言俺に言ってくれれば
共をしたのに───」
「お前が行くと暴れるかもしれないからな」
「義経様!」