第20章 不思議なひと~義経side~
『本当ですか!?』
「お姉ちゃん、お兄ちゃん、ありがとう!」
男の子は泣きそうな顔を一遍し
満面の笑みで感謝を伝える
は
不安そうにそっと義経に耳打ちした
『大丈夫でしょうか。
誰かに顔を見られたりしたら』
「俺が女子供連れで祭りに参加しているとは
誰一人思わないだろう」
『あ、それは確かに』
「それに、いざとなれば
追われる身になっても一人で
活路を開くくらいのことはできる。」
『…わかりました。そう仰るなら』
義経はひとつ頷き、辺りを見回す。
(人の気配はないな)
「俺たちは先程からここにいたが、
弟の姿は見ていない。
町の方に出てみよう」
『そうですね、
お祭りの音に誘われてあちこち
回ってるかもしれませんし』
は男の子に向かって、
優しく手を差し出す。
『それじゃあ、
はぐれないようにお姉ちゃんと
手を繋ごうか』
「うん!」
男の子は満面の笑みを浮かべて、
の手を握った。
そして、反対の手を思い切ったように
義経に差し出す。
「お兄ちゃんも、はい!」
「…………」
(俺も?)
きょとんと目を瞬かせていると
があわあわとした様子で
言葉をまごつかせた
『あ、あのね、この方は、
なんというか、えーと……
そういうことをする人じゃないっていうか』
(俺の立場を気にしているのだろうか)
さほど身分というものを気にしていない
性分の義経は少し戸惑いつつも手を差し伸べた
「これでいいのか」
男の子の手を取った義経が
淡々と問いかける。
「うん!行こう行こう!」
『わっ、待って!』
嬉しそうに歩き出す男の子に
引っ張られて歩き出す。
祭囃子の音が近づいていく───
祭りの賑やかさは変わらないのに
(少し、落ち着かない)