第20章 不思議なひと~義経side~
思わず足を止めてしまった
『お、お団子は、お嫌いですか』
「団子?」
『さっき出店で買ったんです。
助けてもらったお礼に召し上がって
いきませんか…?』
「礼など不要だ。
俺が勝手にしたことだから」
『そういう訳にはいきません
何もしないなんて、
申し訳ないですし…
あっ!もしかしてお団子なんて
食べませんか?
別のもの買ってきた方がいいですか?』
焦ったように言葉をかけるを見て
義経はほんの少しだけ戸惑ったように
眉を寄せた。
「そういう訳ではないけれど」
『っ………じゃあ、ぜひ』
「わかった」
石段に並んで座り、
はさっそく団子を取りだし
義経に差し出した
『どうぞ』
「ああ、いただこう」
義経はお団子を受け取ると、
無造作に口の中に入れる。
『ん!もちもちしてて美味しいですね』
「そうだな…」
咀嚼していくうちに少しだけ眠くなる
「………………」
その様子を心配したのかが
声をかけた
『義経様?
お口に合いませんでしたか?』
「味に問題は無い
…が、この団子は弾力があって
少々骨が折れるな
咀嚼する時を見計らうのが難しい」
『弾力のあるものが苦手って
ことですか?』
「そのようだ
食べているうちに眠くなる。」
『すみません、
そうとは知らずに…
やっぱり別のものがよかったですね』
「構わない
あなたの礼の気持ちは、充分に伝わった」
『義経様…』
は責任感のある女性だから
律儀な性格でもあるのだろう
『義経様って優しいんですね』
(優しい?)
「当たり前のことを言っただけだ
けれど、あなたがそう思うならば
それでいい」
お団子を食べ終わり、義経はぽつりと呟いた
「…良い風だな」
葉が夜風に揺れ、心地よい音を奏でる
葉の音に耳を傾けながら夜空を見上げると
ほの白い月が浮かんでいた
「今宵は月が綺麗だ
平泉で見る月も京で見る月も、
美しさは変わらないな」
月を見上げる義経には
声をかけた
『義経様は京へは一人で来たって
仰っていましたよね?』
「弁慶に知られれば、
口うるさく言われるからな」
『そこまでして、
どうして京にいらっしゃったんですか?』
(あなたの調査とは言えないな)
「視察だ」