第20章 不思議なひと~義経side~
黄金の霧が空気の渦中に現れ
女性の手に吸い込まれていった
(今のは…)
『今の、私が…?』
「どういうことだ」
「まるで義経さんの力を吸収したように
見えたけど…」
「ご名答、この女は俺と契ったことで
呪力を奪う異能を得たのさ」
妖狐の持つ力の精気を吸い取る異能
人間がその力を使う時は
"呪力を吸い取る異能"に変わると
いうことだった
(これは少し、否かなり困ったことになった)
できれば戦から、なんの関係もなく
巻き込まれたあなたをここから
一刻も早く離れて欲しかった
(だが、頼朝公のことだ)
必ず彼女を使う気だろう
(俺はあの人を殺さなくてはならない)
そう思うと胸がズキリと痛んだ
そこに鞍馬が現れ
狐と天狗が語り合う
(これ以上の長居は無用か───)
袖を引かれつつもその場を立ち去った
────────────・・・
「なぁー、弁慶」
「んだよ」
「あの子、変な格好だったな」
「あ?あー、あんまり言ってやるなよ」
「義経様もそう思いますよね?
見たことない着物でしたけど」
「───そうだな」
「くだらん」
(変わってはいたが変では無いと思う)
義経の思いは
恥ずかしさで悶えていたに
伝わることはないだろう