第20章 不思議なひと~義経side~
ほんの一瞬で光は消え
出てきたのは髪の色と目の色が
変わった女性の姿と狐男だった
「君!その姿は無事なのか?」
「、何があった」
『一応無事みたいです
…けど私にも何がなんだか
分からなくて』
義経がやがて目を細めて言い放った
「妖狐と契りを交わしたのか」
「その通りだ
義経とやら、先刻は世話になったな
寝込みを襲われたせいで
呪力の大半を失ってしまった
どう責任を取ってくれる?」
「知らないな
わざわざ鎌倉に殺生石を
運び出した頼朝公を恨め」
『殺生石?』
「那須野にあった毒を放つ
大岩だよ
そこにその狐は封印されてたんだ」
『封印?
運び出した理由は?』
「陰陽師に封印を解かせ、
化け狐を使役して働かせようと
したんだよ。
…まぁ、失敗したが」
「なるほどな
俺を使役しようとは100万年早いが
人ならざる力を手に入れた
義経への対抗策と言うわけか
…義経が目の色を変えて壊しに来るのも
無理はない」
すると複数の足音が聞こえた
「頼朝様、ご無事ですか」
「義経様!」
(弁慶、与一…)
ふたりの方を振り向き
怪我がないかだけ目で確認する
「よく来た、景時、重衡」
「奇妙な光を目にして駆けつけましたが
…不審人物がいるようですね」
その様子を弁慶、与一も見る
「君、さっき会った人でしょう
その髪と目の色どうしたの?」
『いや〜、色々ありまして』
「女は目を離すとすぐ化けるって言うけど
これは大胆に変わりすぎじゃねーの?」
「冗談言ってる場合かよ
……義経様、これは」
「そうだ、そこの女は
狐と契りを交わした
玉藻……、あなたを殺し損ねはしたけど
呪力の大半を削ることが出来た
何を企んでいようとも
最早悪足掻きだろう」
「そう思うなら今度こそ
俺を殺してみたらどうだ?」
『ちょ、ちょっと玉藻!』
「死に急ぐか
……それもいいだろう」
義経が刀を振り上げた
『きゃっ』
空を裂き、瞬く間に作られた風の刃が
玉藻を襲う
『もうやめて!』
「つ!」