第19章 陰陽師助手記録帳参
(あ………)
腕から離れた体温にはっとする間もなく、
義経様が私の手を握った。
私の手よりも大きくて、
温かなそれに鼓動がどくっと跳ねる。
『っどうして…』
「はぐれないように
───何か問題が?」
怪訝そうに顔を覗き込まれ、
肌がますます熱を帯びていく。
『っそういう訳じゃありませんけど…』
(義経様は敵将なのに)
まるで空間が切り取られたように、
祭囃子が遠くに聞こえた。
『っ…行きましょう』
「ああ」
手を繋いだまま、
二人でまた雑踏を歩き出して…
(あっ、いた!)
「もう大丈夫だからな!」
「ひっく……お兄ちゃん、ごめんなさい」
少し先に進んだところで、
男の子達を見つけた。
男の子は藍色の着物を着ている子を、
ぎゅっと抱きしめている。
(あの子が弟なんだ!)
「兄ちゃんもごめんな。
あんなに怒ることなかったのに…
無事でよかった……!」
「どうやら見つかったようだな」
『はい…!』
(本当に良かった)
繋がれていた手がそっと離れていき、
少しだけ寂しさを覚えた。
男の子は満面の笑みで、私たちに向き直る。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん。
一緒に探してくれてありがとう!
これからは弟と、もっともーっと
仲良くするね!」
「ああ」
義経様の唇に、注意しなければ
見過ごしてしまうようなほど
淡い微笑が浮かぶ。