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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第18章 陰陽師助手記録帳弐






「本当にその方が……?」


呆然とか父親が呟いた


「その気があれば、親子二人、
哀しい思い出のない土地で身体を休めて、
生活を立て直せるだけの額だ
彼なりの誠意の証だよ
あ、あとこっちは謝罪文。
もう直接会いたくないだろうからって」


(泰親さんの言葉には幾つかの嘘がある)


実光様は慰謝料としてお金を払った訳では
無いし、文だって泰親さんが脅して書かせた


(それでも、これだけ絶望してる
娘さんとお父さんにとっては
実光様の「心からの謝罪」は多少なりとも
慰めになるんじゃないかな)


「娘さんの身体が良くなったら
渡してあげるといいよ!
………万が一、先方が余計な気を起こしたら
証拠としても使えるしねえ」


(何その呟き!黒!!


──でも、そうか泰親さんは
娘さんためにあれだけの要求をしたんだ)



私腹を肥やす為ではなかったことに
少し安堵する



「っああ、なんという……
ありがとうございます
是非娘のお祓いをお願い致します……!」


涙ながらに父親が泰親さんの手を握って
何度もお礼を言った
























数刻後──────




『娘さん、目を覚まして良かったですね』


「うん。あやかしを祓うと同時に
こっそり軽い生霊封じも施してきたから、
もう問題ないと思うよ」


女性の家を辞した達は
帰路についていた


「あと数日間、経過を確かめたら
一件落着かなあ」



(良かった!)


「さんもお疲れ様!」


『私はただ見ていただけですよ』


「あの女性を診察して滋養をつける薬を
処方してくれたでしょ
本人も父親もすごく感謝してたじゃない」



『──ほんの少しだけでも役に立てたなら
嬉しいです』



(でも、今夜の英雄は紛れもなく泰親さんだ)


『泰親さんって、優しい人ですね』



「…………」


夜の闇よりも深い色の瞳が向けられ、
一瞬たじろいでしまいそうになる


「そう思う?」


『思っちゃだめですか?』



「俺のしたことはただの
仕事の延長だからねえ」


(仕事?、でも……)


「生霊になるのは不幸な人間だけなんだよ
いくら生霊を封じても、恨みや哀しみが
無くならない限り、心と身体に無理が生じる」


『泰親さん……』



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