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イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第18章 陰陽師助手記録帳弐





そして泰親さんが術の痕跡を辿り
向かった場所は………


「あの、陰陽師の方がうちの娘になんの
ご用で……?」


「ちょっと確かめたいことがあったから」


簡素な家の囲炉裏の前に座り、
泰親さんが女性の父親だという男性に答える


『突然おじゃましてすみません…』


「いえ、ですが……
娘はここしばらく臥せっておりまして
お話が出来る状態じゃないんですよ」


憔悴しきった顔の父親に胸が締め付けられた


『ご病気、ですか?』

「気の病だと思うのですが……
一月ほど前、娘は奉公先の公家に
手酷く捨てられました
いずれは結婚すると……
そんな口約束を信じていたようなんです」


(でも、実際には実光様は
政略結婚したんだ………)


「娘は無実の罪を着せられた上、
解雇されて………
絶望の余り命を絶とうとしました」


『っそんな』


「寸前で私が止めたことで
一命は取り留めましたが、
それから異様に眠りが深くなっていって……
目が覚めてる時は何もしてないのに
ひどく疲れると娘は言っていました
今は意識を取り戻しても
声をあげられないほど消耗してるんです」


「──なるほど」



(寝てる間に生霊を飛ばしてたってことか
──だけどそれを知ったらただでさえ
娘さんを心配しているこの人は
どんなに哀しむか……)


やるせなさにぎゅっと拳を握った


「状況は分かったよ
それで娘さんの状態なんだけど……」


『っ』


容赦なく真実が告げられることを
予想して息を呑む



「あやかしが憑いてるだけだから
それを祓えば身体はよくなるんじゃない?」


(え…)


「娘さんの魂の深いところまで
溶け込んでるから、慎重に術をかける
必要はあるけどねえ」


「娘の病はあやかしの仕業なのですか!!」


驚いたように父親が身を乗り出した


「し、しかし…陰陽師の方に
お支払いするような額のお金はうちには
とても……」


「ああ、大丈夫大丈夫
それならもう貰ってるし!」


「え?」


「実は娘さんに手を出した公家の方は
非道な仕打ちを深く後悔しててねえ
慰謝料を預かって来てるんだ」



泰親さんがずっしりと重い袋を
父親に渡す


(このお金って、さっき実光様から
泰親さんが脅し取った「桁が違う」依頼料!)

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