第18章 陰陽師助手記録帳弐
「これでもおまけしてあげたんだよ?
あとツケにしとく」
「まだなにかゆする気か……」
「ゆするだなんて人聞きの悪い
いつか俺が困ってる時にちょっと
助けてくれたらそれでいいよ
義理のお父上の後ろ盾があれば、
君はいっそうの権力を手に入れられる
そんな方との絆を深められるなんて
陰陽師をしてるかいがあったなあ」
とぼけたように泰親さんが笑った
(その顔、絶対思ってない……)
呆れつつも少し怖いと思ってしまう
(実光様が一生変わらないと考えながらも
泰親さんはとことん利用する気なんだ)
ぞくりと背中に寒気が走る
(またひとつ泰親さんを知ってしまった)
実光様の屋敷を出たあと──────
「さてと。
これから生霊を飛ばした女性の所へ行くけど
君はどうする?」
『どうするって…』
「さんさ、
さっき俺のやり方にかなり引いてたでしょ」
(図星)
『そ、れは』
(この人には隠し事なんてできそうにないな)
「無理しなくていいんだよ?
怪異や能力についてはまた今度
別の機会で教えるしねえ」
(そりゃあちょっと怖かったのは事実、だけど)
『最終的に私を助けてくれたのも
泰親さんなので、そばにいることは
無理してませんよ?
それに、怪異も異能も知りたいけど
泰親さんががについても知りたいと
思ってるので、一緒に行かせてください』
「………」
泰親さんがどこか物憂げに
眉をひそめた
「君って変わった子だよねえ」
『や、泰親さんに言われたくない…』
「そう?君みたいな子見たことないや
でも、そうだねえ…君がいいなら
──おいで」
手を伸ばされたので咄嗟に手をおいた
(あれ?どうすればいいの?)
なぜか繋がれたまま歩き出す泰親さん
『……泰親さん、』
(手、)
「ん〜?」
『あ、いや…………もういいです』
「…そう」
(まあ繋ぐだけだしいいか)
変なことしてきたら即座に飛び退いてやる
『あ、そうだ泰親さん』
「なあに?」
『私と実光様がいた部屋に戻ってくる時
誰かとすれ違いませんでした?』
「…………ううん、誰とも」
『そうですか』
(ほんとに誰だったんだろ……)