第18章 陰陽師助手記録帳弐
「何?」
「結婚前から次々に女中に手をつける
だけに留まらず、まさか奥方の親戚筋に
当たるお嬢さんを愛人にしてるなんて、
鬼畜の所業だよね」
(え?)
「な、なぜそれを…」
「とある筋からの情報で」
(もしかして、茶屋の草むらにいた
あのあやかし?)
泰親さんは私に聞いてほしそうにしてなかった
おそらくあのあやかしが言っていた
”テキ"というのは女の敵という意味だろう
全てを理解した泰親さんは
実光様の最低な部分を知って、
苦しんでいる女性がいると
が知ったら
怒ると同時に無理をする、
若しくは女性に同情し、
悲しむと思ったのかもしれない
(結局無理して反抗して
助けてもらっちゃった…)
怒りと悲しみで無茶をしたことについて
反省した
「……っ、どの道証拠などない」
泰親さんが懐に手を入れて
数枚の紙を取り出した
(あれは、手紙?)
「あ、これ、君の執務室に隠されてた
愛人への書状
裏付ける証拠が欲しくて、
さくっと拝借させてもらっちゃった」
「馬鹿な……!
誰にもその隠し場所は教えてないはず」
「気をつけた方がいいよ?
悪意あるところには魑魅魍魎が集まってくる
悪事の目撃者が人間ばかりとは
限らないからねえ」
「…………ぐっ」
実光様は恐ろしい未知の存在を見る目を
泰親さんに向けている
(まあ、少し気持ちはわからないでもないけど
泰親さんにできることは、底がしれないから)
「いくら君が問題をもみ消すのが
上手くても、奥方にこの文を渡したら
誤魔化しきれない
朝廷で奥方のお父上の庇護を受けるために
結婚した君にとっては、
絶対に避けたい事態のはず
特に実光様はもうすぐ出世する時期だから
波風は立たせたくないよねえ」
「陰陽師というのは、天文学や占術を
中心にする役職のはずだろう?」
実光様が掠れた声を振り絞った
「なぜそこまで政に詳しい?」
「陰陽術って便利に見えるらしくて、
政に利用したい人が星の数ほどいるんだよ?
子供の頃からそういう相手と接してれば
自然と政にも詳しくなる」
「な、何が望みだ」
「そうだね。まずは謝って?」
実光様がぱくぱくと口を開けた後
観念したようにうなだれた