第18章 陰陽師助手記録帳弐
口の手ぬぐいを取ってくれた
『あ、あの泰親さん、ありが、』
「…………」
(え?)
は困惑した
口の手ぬぐいを取ってくれたのに
なぜか手で口を覆われてしまったからだ
(なんで?
もしかして、泰親さんじゃない?)
泰親さんなら
大丈夫?と声をかけてくれるだろうし
目の布も取ってくれるはずだ
だとすれば誰だろう
使用の人?
ふわり、と優しい香りが鼻に届く
(あ、落ち着く、このかおり……)
口から手が離されると
はぁ、とため息をつかれた
(な、なんで!?)
「っう、だ、誰だお前は……
どうやって屋敷内に入った!?」
「…………」
「ま、待て!どこへ行く!
うっ、」
意識を取り戻した実光様が
助けてくれた人物を追おうとしたが
足の傷のせいで走れないのだろう
ぱっと目の布をとると
そこには誰もいない
「っお前の仲間か!?」
『ちが、離して!』
詰め寄られ肩を強く揺さぶられる
(痛い!)
「俺の可愛い助手に何してくれてるの?
勝手なお触りは控えてもらえるかなあ」
『や、』
「泰親殿っ……!」
部屋に入ってきた泰親さんが
実光様の手をから振り払った
「嫌な予感がしたから
なるべく早く戻ろうとしたら
家臣の人に足止めされてね
遅くなってごめんね?さん」
『あ、いえ。その……』
(さっきの人が助けてくれなかったら私…)
怖くなって震える手で
泰親さんの袖をキュッと掴んだ
「………」
泰親さんが段々と黒い笑みを浮かべる
「妙な所を見られたね
彼女が急に無礼な物言いをしてきたから
少し躾てあげようと思ってね」
(そんなの嘘!)
「へーええ?
躾が必要なのはどっちだろうねえ
いくらさんが薬師でも、
診察を申し出てくれた親切心に
つけ込むような男に処方する薬は
知らないと思うな!!」
(あれ、?泰親サン??)
今まで曲がりなりにも実光様には
丁寧な口調で接してきたのに
(あとなんか不機嫌……?)
「泰親殿、口が過ぎるんじゃないか」
「俺の態度が変わったことが
そんなに不思議?
君の弱みを握ったから
下手に出る必要がないと判断したって
言ったら、どうする?」