第18章 陰陽師助手記録帳弐
(さっそく手当てをしよう)
『実光様、痛むところを見せて頂けますか?』
「ああ、よろしく頼むよ」
実光様が着物の裾を軽くまくると、
腫れた足首が目に入った
(転んだ時に捻ったんだな)
幸い、仕事中に泰親さんが
怪我をした時に備え、
簡単な薬や手当てに必要な道具は
持ってきている
『炎症を抑える薬を塗って、
治りが早くなるように足首を
固定しておきますね』
「ありがとう。
本当に君は薬師なんだなあ」
しばらくして処置を済ませ、
は立ち上がった
『これで診察は終わりです。
暫くは激しい運動は控えて下さいね』
(早く泰親さんを探しに行こう)
また変なあやかしでも見つけて
追いかけてないだろうかと心配になる
『では、私も泰親さんの手伝いに……』
「ああ、ちょっと待って」
の腕を掴み、実光様が笑いかける
「泰親殿は天才だから手伝いなんて
いらないだろう?
良かったら暫く話し相手に
なってくれないか?」
(どうしよう。
一応身分の高い人だし…断りづらいな)
今ここで断ってしまっては
今後泰親さんの仕事に支障をきたしてしまう
かもしれない
(遅れた理由は後で泰親さんに言おう)
『わかりました
私に話し相手が務まるか自信はありませんが』
「大丈夫だよ
こういう身分だと堅苦しい相手には
飽きててね」
(気さくな人そうでよかった)
「君の暮らしについて教えてよ。
普段は京にいるのかな?」
『あー、実は鎌倉に来たばかりで、
京へは少しの間滞在する予定です』
(未来から来て幕府にお世話になってるとは
言えない)
とはいえ嘘はついていないのでセーフだろう
大きな嘘にならない程度に真実を伏せながら
実光様の質問に答えていく
「君の話は面白いね」
『いえ、そんなことは、とんでもないです』
社交辞令に恐縮して首を横に振る
「本当のことだよ
家柄がいいって言うのも考えものでさ
寄ってくる輩は金目当てだし、
こんな風に会話が楽しい相手なんて
いないんだ」
『ええっと、…でも、
奥様とは結婚されたばかりなんですよね?
お家での時間は心安らぐ一時なんじゃ
ないですか?』
「妻とは政略結婚だよ
公家っていうのはそういうものだからね」
(やけに実光様の距離が近いような…)