第18章 陰陽師助手記録帳弐
『あ、ハイハイ』
(太陽の光がなにかに反射したとか?)
自分を納得させて向かった先には──
『あの、お仕事は?』
「まあまあ
あっ、女将さん。こんにちは
お団子とおまんじゅうのおすすめのやつ
持ってきてもらえるかなあ
あとお茶ふたつ!」
「かしこまりました!」
着席とほぼ同時に注文されてしまい、
抗議の機会を逃してしまう
ほどなくして甘味とお茶が運ばれてきて…
「召し上がれ?」
(こうなったら早く食べて
早く仕事しよう!うん!)
『すみません。いただきます』
(京都に来てお団子ばっかり食べてるな)
お団子をかじると、餡の甘さが
舌の上で広がっていく
『ん!おいしい』
「やっと笑顔になった」
『っ!』
「昨日からずっと顔が曇ってたからねえ
ちょっとは気が抜けた?」
(泰親さんって………
個性的な振る舞いはするものの
人の心の動きに鋭いところが
ある、気がする)
正直、
生霊を見てから少し身構えていた部分もある
『はい、ありがとうございます』
二人で甘味を食べ、お茶を飲んでいるうちに
心が穏やかになっていく
『私を気遣ってここに連れてきて
くれたんですね』
(呆れたりしてちょっと申し訳な……)
「え?違うけど?」
『へ?』
拍子抜けして泰親さんと見つめ合う
「ここには用があって来たんだ」
そういうと泰親さんはお皿に残っていた
おまんじゅうを取り
いきなり近くの草むらに投げた
『えっ、ちょっと
勿体ないですよ!
作ってくれた人に失礼ですっ』
「ごめんねえ
でも、大丈夫。無駄にはしてない」
抗議していると
生い茂った草からにゅっと黒い手が伸びて
おまんじゅうを受け止めた
(わっ、びっくりした)
泰親さんの指にいつの間にか
握られていた呪符が仄かな光を帯びる
その途端、慌てたように草むらが
ざわざわとそよいだ
「だぁめ。対価を受け取ったからには
ただでは帰れないよ?」