第17章 陰陽師助手記録帳壱
「帰ろっか」
『──はい』
意識的に少し声を張って返事をしてから
泰親さんの背中を追った
「あ、そうそう
明日からの予定なんだけど
あとは俺だけで大丈夫だよ!」
『え、?』
(ここまできたのに?)
「さっきつけた印を追えば
生霊の行先もわかるし、
調査の必要もそんなにない
霊障を術で抑えたり、
依頼人の屋敷に軽く結界を張ったりの
雑務で数日はかかるけど…
残る仕事は万事丸く収まるための
地味ーな作業だからねえ
今回は狐憑きの力を使うことも無さそうだ」
『そう、ですか』
(幽霊は苦手だし
生霊って初めて見たし怖かったけど)
若干ほっとしている自分もいる
(このまま任せ切りで後悔しない?)
吟味しているとまたもや
泰親さんが口を開く
「せっかく勧誘したのに残念だなぁ
君にも無理に向き合わせて
悪いことしちゃったね」
(もしかして、助手とか狐憑きの力は
建前で私を調べるためだった?)
私があやかしを普段から
見えていることには気づいただろうし、
霊力が高いことも知っていた
(それもあるかもしれないけど
このまま引き下がって甘えたままじゃ
戦に赴く覚悟すら持てない)
『あの、泰親さん
できれば最期まで私も同席
させてもらえませんか?』
「………
理由、聞いてもいい?」