• テキストサイズ

イケメン源氏伝 〜時を超えて〜

第17章 陰陽師助手記録帳壱





「だけど」


(あ……)


なんの火種もなかったはずなのに
妖しく炎が上がり、
人形を灰にする


「ほら、人違いだ」


【………!】


(そうか、身代わりの術を解いたんだ!)



だったらもう恨む理由も…


【騙したなぁァ!】


女性の怒りを示すように
周りの空気が重く冷たくなっていく


(うーん、逆効果……)


「落ち着いて」


【ああああ殺す……!】


(いけないっ)


『泰親さんっ危な…』


「この前、さんには
みっともないとこ見ちゃったし、
──少し、本気だそうかな」




泰親さんがゆるゆると
白い指を女性に向けた



「乱暴するのは、
好きじゃないんだけどなあ
話せば分かるって段階、
…とっくに超えちゃってみたいだね」


(これは……一体誰なの)



依頼主の前での振る舞い、
いたずらっ子のような笑みをうかべた
陰陽師


(……じゃない)


これはきっと



天才陰陽師の時の顔なんだ






泰親さんの薄い唇には
もういつもの笑みは残っていない




「残念だけど、もう俺からは逃げられないよ
……諦めて?」



紫の雷光が指先からほとばしり、
夜闇をぎらりと灼いた
夜の空気ごと冷たい針で縫い付ける
ように言の葉が紡がれていく





《──咎人は牢で歌え。
それは罪に満ちた子守唄。
そう、怒りが怠惰に溶けるまで
どろどろと深く眠れ、急ヶ如律令…》



/ 320ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp