第17章 陰陽師助手記録帳壱
そして、息をそっと人形に吹きかけて
小さく唱えた
《──────な・り・か・わ・れ》
(っ、今のは?)
風も吹いていないのに
蝋燭の火が揺れた
「これであやかしや霊には
俺達が依頼人とその奥方見える
ようになったよ」
『本当ですか?』
(ものすごく簡単そうにやってたけど)
泰親さんが人形を回収し
懐にしまう
「ほんとほんと
まあ物は試しにやってみる?」
『やってみるって何を──っ』
(!!)
頬に泰親さんの手が触れる
飄々とした笑みを宿していたはずの唇には
いつしか妖しい色香が滲んでいた
「ここは寝所で
君と俺は夫婦だよ
今までも怪異は起きてた
でも女が姿を現したのは
夫婦の夜の時間」
(確か、枕を交わしてた時って言ってたよね?)
枕を交わす
その言葉の意味は子供じゃないから
理解できる
理解できるからこそ
少し気まづくなり視線を逸らした
(って、まさか)
嫌な予感が──────
「普通に待ってて現れないってことは
俺の勘だと人物が状況、あるいは
その両方に原因がある
だから俺と君が”それっぽく”
振る舞えば姿を現すんじゃないかなって」
『それっぽく……演技ってことですか?』
「そうそう」
『理由は納得しましたけど……』
(ちょっと、いやかなり恥ずかしいのでは?)
「そんなに難しく考えるようなことじゃ
ないと思うな
今君にとって俺は愛する男だよ
そういう顔で見つめて?」