第16章 京
「どういたしまして」
『お礼したいんですけど
私、京には初めて来て
その上迷子で……
ごめんなさい』
「はぐれたのなら仕方ないよ
人も多いしね
お礼と言うなら
少し付き合ってくれないかな」
『え?で、でも』
「君の迎えがいつ来るか
分からない以上ここに突っ立てても
仕方ないと思うな」
『た、確かに…』
「またああいう男に絡まれるかもしれないし」
『私に絡む人なんて
そうそういないですよ
あの人たちはちょっと
特殊な趣味を持ってたんでしょう』
(私を狙うのはあやかしか、
敵である反乱軍)
あの人たちは偶然見かけた私に
声をかけただけ
次があるとは思えないが
「そうか
なら俺も特殊な趣味とやらなのかも
しれないね」
『へ?』
「やっぱり
だめかな?」
(うーーん、でもこの人の言う通りだよね)
町の人の視線もそろそろ痛い
『わかりました
それがお礼になるなら…』
「ありがとう」
『えっ!ちょ………っ』
そのまま流れるように手を繋がれた
(早まったかな私)
やるべく早く泰親さんが見つけてくれるのを
祈るしかないだった