第13章 浅薄
『「兵の命は俺の命あなたはそれを
ひとつ救った」──
そう仰ってました』
「相変わらずだな
淡々として見える癖に
余計な情を抱え込む男だ」
(なんか、引っかかる言い方…)
『あの、頼朝様はご兄弟だから
義経様の事よくご存じなんですよね?』
「そうでもねえよ
兄弟と言っても所詮は腹違いだ
育った場所も、食った飯も違う」
(私歴史にはそこまで詳しくないのよね)
『そうなんですか?
じゃあ、おふたりが初めて会ったのって…』
「俺が平家相手に挙兵した時だ
義経は少ない手勢を率いて
わざわざ加勢しに来やがった
──会ったこともねえ
生き別れの兄の為にな」
(頼朝様は確か今のような
征夷大将軍ではなかった
少ない手勢で来たってことは
参加すれば命の危険だってあったはず)
『じゃあどうして、
義経様は、頼朝様の元へ駆けつけたんでしょう』
「──知らねぇな」
言葉とは裏腹に頼朝の唇には
珍しく苦笑が浮かんでいる
「ま、あいつのお陰で
戦いが随分楽になったのは事実だが」
『…頼朝様は』
「何だよ」
『っいえ、』
(頼朝様は…本心では義経様の事を
憎んでないのかもしれない)