第12章 信念
「──矛盾は誰の中にもある」
不意にその声色が僅かな切なさを
孕んだことに驚き、顔を上げる
「それを切って捨てることができる
人間を、俺は1人しか知らない」
差し込む月明かりに照らされた
義経様は憂いを帯びた雰囲気を纏っていた
(いったい、誰のことを言ってるの………?)
『あの……』
が声を発するより早く
義経が口を開く
「手当には礼を言う
家臣の命は俺の命。
あなたはそれをひとつ救った
だから俺もあなたを殺すことを
一度見逃そう」
『え………?』
(今、見逃すって…いった?)
すぐに信じることができず
耳を疑ってしまう
「意外そうな顔だな」
『だって、絶対殺されるって
思ってましたから……』
「安心していい
一度口にしたことは違えない」
(………っ良かった)
緊張の糸が切れてその場にへたり込む
(まだ完全に安全と決まったわけじゃない)
けどこれ以上義経様が
私に刀を向けることは無いと
不思議と信じられる
義経はを見下ろし
淡々と告げた