第12章 信念
『……そのためにたくさん勉強しました
もちろんたくさんの人の手当てもしてきました
治療する手段を持っているのに、
目の前で傷ついている人を見過ごすような
人に、人殺しのようなことは
したくなかった………です。』
「だから助けたというのか」
『駄目ですか?』
「戦場にたつものとして、
敵を助けるのは正しくはない
弱った振りをして、
命を狙ってくる者もいる筈だ
──あなたは見過ごすのは人殺し
だと言ったな
ならば周りで人殺しをしている
味方の武士を見て、非難するのか?」
『っそんなつもりは……!』
「ない、と言えるのか?
人殺しをしたくないと言った、その口で」
『……っ』
「それだけではない
敵である以上、相まみえる日が来るだろう
その時あなたが助けた兵が、
仲間を討つ可能性は考えなかったのか?」
(っそんなこと!)
全てを見透かすような瞳から逃れたくて、
顔を逸らす
(分かってた
この人を助けることがどういうことか)
返す言葉もなくて
は下唇を噛んだ
「…けれど──」