第12章 信念
「義、経様……不甲斐なくて……
申し訳、ありません……」
「気にするな。今は休め」
「っはい」
義経に声をかけられ
兵は安心したように気を失った
(義経様のこと
恐ろしい人だと思ってた)
頼朝様の敵
玉藻を殺そうとした人
私を助けてくれた義経様は
もう居ないと思ってた
(だけど兵のことを一切責めなかった)
「………」
兵を見つめる義経は
どこか安堵しているようにも見える
(さっきの顔は……、
兵を見た時のあの顔は、
人を想っていないとできない表情だった)
「……」
『っ!』
突然向けられた視線に身を固くする
「何故、敵と知りながら助けた?」
『え………?』
義経は刀に手をかけることなく
淡々と尋ねてくる
「答えろ」
『それは………』
浅い息を繰り返す兵に目を向ける
(この人が敵兵だと知った時
怖くなかったと言ったら嘘になる
それでも──)
『私、医者になりたいんです』
「いしゃ?」
『あ、ええと(この時代でなんて言うんだろ)
怪我をしてる人を助ける人のことです』
「……薬師のような人のことか?」
『そうです!』
(そうか、この時代では薬師なのか)