第12章 信念
ぐっとお腹に力を入れて、
ゆっくりと口を開く
『味方とはぐれて避難した場所に
酷い怪我をした兵がいて……
早く手当てしないと駄目なんです
だから、お願いします
刀をひいてください!』
「──……」
真意を探るように、じっと見つめられる
(義経様にとって
狐憑きは邪魔な存在
怪我人に構わず、
斬り捨てられるかもしれない)
でも、それでも──────!
真っ直ぐに義経様を見つめる
「──そうか」
(え──────)
ややあって刀が引かれる
ぽたぽたと手から滴る血を
ぼーっと眺めた
(た、助かった……の?)
もう片方の手で
血の着いた手を抑える
義経は刀を鞘に納めると
に向き合った
「立て。
俺も怪我人の元へ行こう」
『え?』
「聞こえなかったのか?」
『いえ!ばっちり聞こえてました!』
(聞こえてはいたけど…)
なんで?
義経が一緒に来る理由が分からない
「では早くしろ
一刻も早く手当てをしなければいけないという
言葉に偽りがないのなら」